商標登録のメリット

商標登録のメリット本記事をお読みになられている方の中には、商号をとっていれば(会社の設立に際して、会社の名称を登記していることです。)、商標登録なんて不要じゃないか、出願手続きはお金がかかるし、面倒くさいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、商標登録を受けると様々なメリットがあります。商標を出願し、登録を受けると商標権が与えられます。商標権者には、指定商品または指定役務に対して登録商標を独占的に使用できるという専用権と、他人が指定商品等と類似する範囲で登録商標と同一類似の商標を使用することを禁止する禁止権が与えられます。商標権の効力は日本全国に及びます。商標権者でなく、法律上の正当権限を有しないものが商標権の専用権、禁止権の範囲で商標を使用すれば商標権の侵害になり、商標権者は差止請求権(法36条)、損害賠償請求権(民法709条)、不当利得返還請求権(民法703条、704条)等を行使することができます。これに対し、商号は同一の市町村区内で同一の商号を使用できないとするものなので、商号を取得していても、商標権者から商標権を行使されるということがありうるのです。商品等の表示が周知のものであれば不正競争防止法による保護を受けられる場合もあります。

しかし、不正競争防止法の場合、権利行使をする側が侵害行為に対する主張立証を行わなければならないのに対し、商標権を取得していれば過失の推定が働き、権利行使が容易となります。

商標登録を受けることができない商標1

商標登録を受けるためには、記載要件(5条、6条)、登録要件(3条、4条)を満たす必要があります。査定時に3条1項柱書き及び3条1項1号乃至6号に該当する商標は、原則として商標登録を受けることが出来ません(15条1号)。3条1項柱書きは、「自己の業務にかかる商品又は役務について使用」をしないことが明らかであるときは登録を受けることが出来ない旨を定めています。つまり登録にあたり「使用の意思」を求めています。なぜなら法は、「商標は使用により信用が化体し、保護しうる価値が生まれる」と考えており、使用しない場合は信用が化体しなので保護する価値がないと考えているからです。

3条1項柱書きで拒絶される場合の例としては

1.出願人の業務が法律上制限されていて出願人が指定商品等を使用できないことが明らかな場合
2.指定商品等を業務として行えるものが法律上制限されている場合
3.指定役務「総合小売等役務」を個人が指定してきた場合
4.1区分内での指定商品等が多岐にわたっており使用の意思に疑いがある場合
5.団体商標について団体およびその構成員又は団体だけが使用し、構成員は使用しない場合
などがあります。

商標登録を受けることができない商標2

まず、3条1項1号では、「指定商品、指定役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は登録を受けられない旨、規定されています。「普通名称」とは、その名称が特定の業務を営むものから流出した商品又は役務を指すものではなく、取引界においてその商品又は役務の一般的な名称として認識されているもののことを言います。具体的には商品「時計」について「時計」の商標、役務「美容」について「美容」の商標などです。また普通名称には略称や俗称も含まれるので「アルミ」(アルミニウム)や、「パソコン」(パーソナルコンピューター)、「おてもと」(箸)等も登録を受けられません。

次に、3条1項2号では、「その商品又は役務について慣用されている商標(慣用商標)」は登録を受けることが出来ない旨規定されています。「慣用商標」とは、同種類の商品又は役務について同業者間において普通に使用される中で自己の商品等と他人の商品等とを識別することができなくなってしまった商標を言います。具体例としては指定商品「清酒」に対して「正宗」、指定商品「カステラ」に対して「オランダ船の図形」、指定役務「宿泊施設の提供」に対して「観光ホテル」などがあります。

商標登録を行うことができない商標3

3条1項3号では、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は登録を受けることが出来ない旨を定めています。
例としては、青森産のりんごに「青森りんご」などがあります。また、「うまい」、「すぐれた」など商品の品質、効能等を直接あらわすものの他、「うまーい」や「スグレータ」など長音符号を除いたときに商品の品質、効能等をあらわすものも登録を受けることが出来ません。
書籍の題号については題号がただちに特定の内容を表示するものと認められる場合は登録を受けることができません。
また、指定商品の一般的な形状をそのまま立体的商標として登録を受けようとする場合もこの3条1項3号に該当します。
3条1項3号の拒絶理由に該当した場合でも、3条2項(使用による識別性)又は、7条の2(地域団体商標)の適用により拒絶理由を解消できる場合があります。これらの事例については、別途解説します。

商標登録を行うことができない商標4

3条1項4号は、「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は登録を受けることができない旨を規定しています。
具体例としては、指定商品「自動車」に商標「佐藤」、「田中」のほかこれに普通名称を足したような「佐藤自動車」や「田中自動車」なども原則として登録を受けることができません。3条1項4号でいう「ありふれた氏又は名称」とは50音電話帳で相当数あるような氏又は名称が該当するとされています。

3条1項5号は、「きわめて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」は登録を受けることができない旨を規定しています。
具体例としては、仮名文字1字やローマ字1文字又は2文字からなるような標章や、1本の直線や波線、「○」、「△」、「□」などの記号、立方体や直方体の形状などは本号に該当します。
3条1項6号は、「3条1項1号から5号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品または役務であることを認識することができない商標」は登録を受けることができない旨を規定しており、いわゆる総括条項となっています。
具体例としては、「平成」のような元号や、スナックや喫茶店に多数使用されているような店名である「愛」、「純」、「ゆき」などがあります。また地模様のみからなる標章や標語、キャッチフレーズ等も登録を受けることができません。

商標登録を行うことができない商標5

前回まで、ご説明してきた商標法3条は、商標としての一般的適格性という観点から商標登録を認めないというものですが、4条は3条に規定する一般的適格性を満たしているとして、その上で具体的に公序良俗の見地及び他人の業務にかかる商品等と混同を生ずるか、商品の品質の誤認を生ずるか等の見地から登録を認めるべきでないものについて規定するものです。
4条1項1号は「日本国の国旗、菊花紋章、勲章、褒章または外国の国旗と同一又は類似の商標」は登録を受けることができない旨を規定しています。
2号はパリ条約の同盟国等の国の紋章、記章であって経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標は登録を受けることができないことを規定しています。
要するに国の尊厳等を尊重するという観点から設けられている規定になります。
3号は国際連合その他の国際機関を表示する標章であって経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標は登録を受けることができない旨を規定しています。これは国際機関の地位、権原はきわめて大きなものであることから、これらの機関についても尊厳を傷つけることが無いように規定されたものです。

商標登録を行うことができない商標6

4条1項4号は「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(昭和22年法律第159号)第1条の標章若しくは名称又は武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)第158条第1項の特殊標章と同一又は類似の商標」の登録を禁止する規定です。4条1項4号で規定される商標についてはジュネーブ条約等で使用が禁止されている為、商標権を設定することは妥当でないことから登録を禁止しています。
4条1項5号は「日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であって、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの」の登録を禁止する規定です。趣旨としては2号、3号と同様に表示するものの尊厳を守る為です。また5号については商標が全体として同一又は類似の場合だけでなく、一部に含む場合も登録を受けることができません。このようになっているのは、5号のような商標は品質保証機能が強い為、品質誤認を起こさないようにする為です。
4条1項6号は「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」の登録を禁止する規定です。
具体的な例をあげると、都市の紋章、NHK、JETRO等が該当することになります。

先願主義とは

先願主義とは、一番最初に商標登録出願した者に商標権を付与する主義のことです。
先願主義と対立する概念として、一番最初に商標を使用した者に権利を認める先使用主義があります。
日本においては先願主義が採用されております。このブログを見ていらしゃる方には、先に使用していたのに出願が後だからって登録できないなんてと思われるかたもいるかもしれません。
しかし、先に使用をしていたというのを証明するのはとても難しいのです。その点、先願主義は、特許庁への出願時点で判断時となるので、どちらが先かがわかりやすいのです。
そういったことから日本では先願主義を採用しております。みなさんが商標登録がしたいと思ったら誰よりも早く出願しなければならないということを覚えておいてください。

一商標一出願の原則と一出願多区分制

商標法第6条第1項では、一商標一出願の原則一出願多区分制について規定しています。
一商標一出願の原則とは、一出願で出願できるのは一つの商標だけであり、複数の商標を出願できないことを意味します(第6条第1項)。
一出願多区分制とは、一出願で複数の商品・役務を指定できることを意味します。
商品・役務の区分については政令で定められており、政令で定められた区分に従って出願しなければなりません(第6条第2項)。
商標登録出願時の特許庁への手数料は3,400円 +(区分数× 8,600円)となっており、
数区分をまとめて出願する方がお得となっています。

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