年金と失業給付は両方もらえない?

ある会社の64歳になる男性従業員からこんな質問が会社によせられました。

この男性従業員は、一度60歳で定年退職し、その後会社が継続して再雇用をしている方だそうです。

ちなみにこの会社では定年を就業規則で60歳と定めれています。また、定年後本人が希望した場合は、希望者全員を65歳まで再雇用する制度も同時に就業規則に定めています。

今回の男性従業員は、勤続30年以上、製造現場の大ベテランで仕事ぶりも大変よく、まだまだ若手がその技量に追いつくには時間がかかりそうだなと会社では考えておりました。

会社側としては、あと1年で再雇用契約も終了するので、本人さんがよければ、更に延長してもらえると非常にありがたいと内心思っていました。

ところが会社定期健康診断の結果、異常があった為、即入院し、治療に約2か月程、要したそうです。
ある日、その男性従業員から、職場復帰したもののやはり体調も芳しくなく、今までのようなフルタイムでの勤務は肉体的にも自信がないため、軽易な仕事でかつ時間数を短くするかまたは退職して別の会社で体の負担が無い程度の仕事をしたいと申し入れがありました。
会社側も永年勤務して頂いた方で出来る限り譲歩したと思いましたが、肝心の軽易な仕事となると該当するものがなく、最終的に引き止めることができませんでした。

そこで、その男性従業員がこんなことを尋ねてきました。
「現在老齢年金がもらえる年齢で会社から給与をもらっていたので一部年金が止められてました。今度退職した場合は、当然会社からの給与はないので、年金が全額支給されると思います。ただ、家でじっとしているのもかえって体によくないので仕事を探そうと思います。」
出来れば、次の仕事が決まるまでの間、失業保険が受給できるのであれば現役時代の手取りとまでは言わないものの非常に助かります。年金と失業保険って別の制度だから、たまたま時期が重なっても両方受給ができるんですよね?っと質問されました。

そこで回答に困った会社側が調べた結果は、以下のようになりました。

・老齢年金は、老後になって働けなくなった場合の保険として生活費を支給する。
・失業保険は、働く意思と能力があるにも関わらず、仕事に就けない状態にある場合の保険として生活費を支給する。

趣旨が老齢と働く意思と能力があるにも関わらずの状態の2つを除けば、働けなくなった場合という趣旨は全く同じ制度です。
趣旨が同じものである場合は、両方ではなく、いずかの支給になります。
ちなみに今回の老齢年金、失業保険では、失業保険が支給される間は、老齢年金が支給停止となります。

参考:65歳以降で退職し、同じく老齢年金と失業保険を同時に受給できる場合、この時は、老齢年金は、支給停止されず、全額支給されます。もちろん失業保険も受給できます。

この内容には、諸説ありますが、まず65歳からは、老齢年金の内、老齢基礎年金が支給されます。
老齢基礎年金は、そもそも老後になって働けなくなった趣旨と働いていても永年の納付に対して還元する趣旨も併せ持つため、本人が年金の繰り下げ請求をしない限り、支給されます。
また、失業保険の方も、雇用保険の加入に期間によりますが、最大法令で計算された額の50日分を一括で支給されます。この一括支給の制度上、年金を支給停止させる処理が行われる前に受給が完了してしまうこと等が挙げられます。


補足説明:参考から上位に記載の「老齢年金」とは特別支給の老齢厚生年金を指します。
       参考から以下の老齢年金は、①老齢厚生年金 ②老齢基礎年金を指します。

       失業保険は、正確には失業給付と言います。

残業時間の端数処理に伴うトラブル

残業時間の端数処理に伴うトラブル入社して1年経過した社員から割増賃金の計算について、異議を申し立てられました。
内容は、会社は、午前8時30分開始、午後5時30分終了。
お昼に1時間休憩をとっている為、実働は1日8時間となります。
午後5時30分以降、残業は全くない日もあれば、10分、20分、忙しい日には1時間ないしそれ以上の残業時間が発生することもあります。
会社では、従来から午後6時以降の場合のみ割増賃金の計算をして支給していました。しかし、5時59分で終了した場合は、29分残業しているにも関わらず、支給しないと昔からの慣習で計算をしています。
因みに6時ジャストで終了する場合は、30分の割増賃金の支給はあります。

今回、たまたま1時間以内の残業時間が多く発生しており、当該社員のタイムカードは、以下の通りになっていました。
残業なし 3日 29分までの残業 7日(時間数換算 3時間)30分以上の残業 11日(時間数換算 8時間)
この社員の給与は、月額20万円で当社の月平均労働時間は、月間160時間です。
時間給換算にすると1,250円となります。
会社にて計算した給与金額は、20万円+{(1,250×1.25)×8}=212,500円

会社は、小規模である為、基本の仕事はあるものの、忙しい時には、他の仕事もこなしてもらうこともある為、30分未満の残業はよく発生します。そのため、会社では、従来から暇なときには、30分の休憩を自由にとるようにしていました。ですから、会社としては、その取決めがある為、30分未満の割増賃金は必要ないと判断しています。

ポイント:まず就業実態がどのようになっているかを確認する必要があります。
・勤務状況がわかるもの(タイムカード、出勤簿等)によって、終了時間がわかります。
・休憩時間(こちらもタイムカード、出勤簿等)によって確認できる場合とそうでない場合があります。
 → 以外と休憩時間を印字していることが少ない等
不明な場合は、1人だけでなく、全体的に休憩がとれているかを確認します。
因みに今回は、昼の休憩は全員1時間とれていますが、残りの30分は、形式的だけで実際には、とれていませんでした。
※就業規則でも昼休憩の1時間については明記されていましたが、残りの30分には記載がありませんでした。

上記から想定するとやはり30分未満の残業は、発生しているものの、支給対象にはなっていないことがわります。この場合、この切り捨て行為が賃金全額払いの原則に違反し、未払いと判断され、是正指導等の対象となります。

※上記のような1日ごとの切り捨てではなく、1月における時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の時間の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て30分以上は1時間に切り上げることは、問題ありません。

慣習は、良い意味のものもあれば、違法である慣習もある為、慣習を見直し、30分間の休憩を就業規則等で明示し、時間管理して休憩を取らせることをお勧めいたします。
どうしても休憩が取れない場合は、やむを得ないですが、割増賃金が発生いたします。

解雇予告期間の延長にまつわるトラブル

会社で配送兼営業として勤務していた従業員がある日、「業績不振の為、来月いっぱいで辞めてもらいたい」と通知しました。通知した日は、8月末日なので、9月末日をもって終了とのことでした。
この従業員は、会社が業績不振にあえいでいたのを知っていた(今年から従業員全員の給料が一律引き下げられた等)為、解雇はやむを得ないとしぶしぶ承諾して通知後、勤務していました。

9月29日になって、会社に急な受注が発生した為、会社から「急ぎの注文が入ったから、給与払うから5日間延長してほしい」との要請を受けました。
この従業員は、次の仕事を探す為、通知後いろいろと準備をしていました。解雇を通告した者に対して再度会社の都合でしかも短期間だけ延長してほしいというのは、むしが良すぎるのではないかいと思い、退職後、労働基準監督署へ相談したそうです。
本人の希望としては、再度の解雇通告にあたるので、改めて30日分の解雇予告または解雇予告手当を支払ってほしい。そうでなければ、解雇を撤回して、雇用継続してほしいとのことでした。

本人からの上記の要望に対して、会社側は、あまりにも急な受注であった為、当該従業員を含めて対処しなければ納期に間に合わない為、急遽、応援依頼をお願いした。こちらの認識としては、その分の賃金を支給しているので、あくまでも「解雇日を変更(延長)してもらった」と思っているとの事。
そのため、再度解雇の通知、または解雇の撤回とは考えられない。

ポイント:解雇予告期間満了後(ここでいうと9月末日)、引き続き使用する場合には、通常同一条件にてさらに契約がされたものとみなされる為、再度の解雇予告の通知が必要となります。
今回の場合、9月末日から再度延長となる為、解雇をするのであれば、再度の解雇予告または解雇予告手当が必要となります。

会社側と話し合いをした結果、経営上、財政が厳しい為、継続雇用は出来ず、退職日も10月5日で変更が出来ないことから、5日分給与とは別に30日分の解雇予告手当を支給することで合意しました。

会社側としては、ほんの延長ととらえがちですが、いったん解雇を決められた従業員に対しての心情解雇の重要性を考えると延長は避ける方が会社・従業員とっては、ベターだと思います。
また、解雇予告の必要性がある判断した場合、その手続きを踏んでいなければ労働基準監督署から是正指導をうけることになるので、解雇及び延長の場合は、取扱いに十分ご注意ください。

休職期間におけるトラブル

営業担当として勤務していた30代男性は、ストレス等による体調不良の為、欠勤が続いていたが欠勤日数が40日を超えた時点で「就業規則の規定により解雇する」という会社からの解雇通知が自宅に届いた。
後日、体調回復後の復職を申し入れたが、会社から拒否された為、会社と現在、協議をしている状態である・・・・・

・労働者側の主張
医師から業務外のストレスが原因とみられる軽いうつ状態と診断され、その後、心身ともに回復出来ない為、年次有給休暇を使い切ったあとも欠勤が続いていた。
会社の就業規則には休職規定もなく、連続欠勤日数が40日を経過した為、解雇に踏み切られた。

会社側の主張
・会社の就業規則では、解雇事由の一つに「業務上の事由以外で引き続き欠勤日数が40日を超えたとき」と定めていた為、その事由に基づき、解雇を通告した。また、会社の経営状態も非常に厳しくなっていることから、この労働者の復職までは待てず、すぐにでも代わりとなる営業員を採用しなければならない。今回は、規定に基づいた解雇である為、解雇予告手当を支給しない方針である。

ポイント
・解雇の妥当性
解雇は、労働基準法で以下のように定めています。
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効とする」
このフレーズ、個人的な解釈によって、大きくも小さくもなります。では、実際の法律上の見解はどうなのか?
答えは、かなり限定された内容にのみ合理性が認めれると言われています。
例:会社の経営上、解雇しないと倒産してしまう。労働者が犯罪を犯し、起訴された等

今回事例では、就業規則に解雇事由があり、その事由に基づいた処分となっています。一見まったく問題が無いように思われますが、規定と実際の見解とは、温度差があります
では、何の為の就業規則かわかないと思われるかもしれませんが、解雇をする場合は、実際に気をつけないといけない点が2点あります。

【1】十分な話し合いができているか
【2】解雇予告または解雇予告手当があるか

【1】について、解雇事由そのものが、法律でいう合理的な理由といえるのか。そうでなければ本人の弁明等をヒヤリングし、社内でできる代替措置等の提案が出来ているか。
今回の事例というと、合理的な理由、答えは× です。
では、解雇を通告するわけですが、まず話し合いの場面があったか? 答えは× です。
いきなり自宅に解雇通知を送ってますよね。その後に話し合いはしていますが、まとまらず平行線の状態である。
この文面からの想像だと代替措置の提案もなかったと思います。

結論:就業規則の解雇事由は、合理的は理由を除けば、あくまでも会社としての指針です。
ですから、指針を実行する場合、十分な対応(とりわけ誠意のある対応)を心がけることが重要です。
考えていただくと想像ができると思いますが、「解雇される側の気持ち」を少しでも理解して対応してあげて下さい。そうすることで、かなり話が前向きに進展します。

【2】解雇とする場合、法律上の解雇予告除外内容を除き、解雇予告(よく言われる30日前に通知)
または解雇予告手当の支払いは必要となります。
もし、この手順を踏まないと労働基準監督署から是正指導をうけることになります。

総括:今回の事例では、就業規則の作成・周知という点で、まずは、就業規則の存在自体、労働者に周知できていたかと思います。就業規則は、会社側が一方的に作成することができますが、周知できる状態にしておかないと、その効力がありません。
(例:服務規定があっても、周知していないとルール違反をした労働者に始末書を取ることもできない)
周知方法は、各人の配布し、説明することが最良ですが、すくなくても労働者が見たい時にはいつでも閲覧できる状態にして下さい。

作成内容については、「休職規定がない」ことが問題です。休職規定の意義は、休職期間満了後、期間満了による退職として、会社都合というよりは、むしろ自己都合に近いニュアンスでの退職として対処出来ることがあります。但し、解雇の規定、退職の規定とリンクする所なので、休職規定を含め就業規則の整備をしておくことをお勧めします。
また、傷病の場合、本人の仕事復帰が本当に可能なのかは重要な要素であり、本人の主張だけでなく、医師の診断書を提示てもらったり、 場合によっては、診断書の信憑性を確認する為、会社側の指定した医師の診断を受けてもらう等により、最終的な復職判断をされると良いと思います。

傷病の現在の状況確認について、今回事例では、会社・労働者双方が途中での状況確認が全くなかったことも問題だと思います。状況報告出来ない状態であるならまだしも、双方ともが出来ないということは、無いですよね。こうした事例に備え、就業規則等でルール化をしておくほうが良いと思います。(例えば:1月に1度訪問等) また育児休業以外の休職については、社会保険料の免除が無い為、会社が立替払いとなることもありますので、注意しましょう。
状況確認の為、対面等があれば、いきなりそこで打ち切りってことにはなりにくいと思いますが・・・

最後に解雇の結論を出す前にそれ以外の措置はできなかったのか?例えば、配置転換する等
また、話し合いの段階で代替案が出来なかった場合、または代替案を拒否された場合、結論を出さざるを得ないですが上記の総括で述べた内容を段階的に踏まえたうえで、誠実に対応されるとリスクはぐんと低減されると思います。

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