遺産の評価

遺産評価の方法鑑定遺産の評価遺産分割の家事調停手続と家事審判手続のいずれにおいても、民事訴訟法による鑑定を実施することができます。当該財産の評価に付いて専門的知識を有する者(不動産については不動産鑑定士、非上場株式会については公認会計士)を鑑定人に選任し、宣誓の上評価させた鑑定結果は、各種の評価方法のうちでもっとも信頼度が高い基本的な評価方法といえます。

鑑定費用の負担については、予め鑑定人に見積もらせた予定額を各相続人の法定相続分に従って予納させる扱いです。

鑑定以外の評価方法客観的な価格が定められない遺産の評価方法については、当事者の合意があれば、それが特に不当なものでない限り、鑑定以外の簡易な評価方法をとることもできます。遺産分割調停の実務上は、当事者の合意を可能な限り形成し、これに基づいて遺産の評価をすることが多く行われています。例えば、不動産であれば固定資産評価額、路線価、不動産業者による査定額によるなどが挙げられます。

次に、家事調停段階では、当該事件を担当する家事調停委員会以外の家事調停委員に、不動産鑑定士や公認会計士を家事調停委員に指定して(専門委員)、評価意見の説明を求めることができます(家事事件手続法264条)。また、家事審判段階においても、同様に参与員に専門家を指定して、その評価意見を述べさせることもできます(同法40条)。

これら専門委員や参与員の評価意見を求めるとしても、その実効性を図るために、当事者間で予めその評価意見に従う旨の合意を形成しておきます。

不動産の評価遺産となる不動産の評価は、当事者の合意に基づく評価または不動産鑑定士による鑑定によってなされることになります。

抵当権設定のある不動産遺産分割調停においては、対象不動産を取得する相続人が、他の相続人が負担する被担保債務を引受け、引受けた債務相当分を対象不動産の評価額から減額するのが一般的です。

他方、遺産分割審判においては被担保債務相当額による減額をしません。債務は遺産分割審判の対象外とされているため、債務の負担なきものとして評価せざるをえないためです。

使用借権付土地更地価格から1~3割程度減額されることが多いです。

借地権当事者間の合意で借地権や借地権割合を控除した底地を評価することが多いですが、鑑定する場合もあります。

借家権建物価格(固定資産税評価額=自己使用価格)に借家権割合(3~4割)を乗じて評価し、土地部分は自己使用価格から、借地権割合と借家権割合の相乗積を乗じた価格を控除して算出します。

預貯金等の債権の評価預貯金(債権)は現在残高が評価額ですので、金融機関から残高証明書を発行してもらいます。満期日が未到来の定期・定額預貯金(債権)については、審判直前の基準日において中途解約した場合の払戻予定額で評価されます。

預貯金以外の債権については、弁済期が到来しており回収が確実といえるものは、額面通り評価します。他方、回収可能性が低い債権(条件付債権含む)については、当事者の意見を聞いた上で評価額を合意するか、鑑定をして決めることになります。

株式の評価取引価格が公表されている上場株式などはそれに取引相場により評価します。他方、非上場株式については、相続税申告書に記載の評価額を参考にして、会社の過去3年分ほどの決算書類をもとに各相続人から意見を求めて、株式価格の合意をするか、鑑定をして決めることになります。なお、鑑定費用は相当高額になる傾向があるようです。

動産の評価貴金属類や骨董品等の美術品で客観的価値が高い動産は、判明している限りの市場価格や購入価格などを参考にして、できるだけ相続人の合意により評価をしますが、鑑定によることも可能です。また、ネットオークションで換金して代金を分割する等の合意をするケースもよく見られます。他方、交換価値の低い動産については、現に使用している相続人にそのまま使わせるなどして遺産分割の対象から除外するなどすることもが多いようです。

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