解雇制限について(労働契約法16条)

解雇労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定しています。これは、判例により既に確立していた解雇権濫用法理を明文化したものです。

客観的に合理的な理由」とは、以下4つに大別できます。
(1)労働者の労務提供の不能や労働能力または適格性の欠如・喪失
(2)労働者の規律違反の行為
(3)経営上の必要性に基づく理由(合理化による職種の消滅と他職種への配転不能、経営不審による人員整理(整理解雇)、会社解散などの事由)
(4)ユニオン・ショップ協定に基づく組合の解雇要求

解雇制限について(労基法、雇用機会均等法、育児介護休業法等)

(ア)労基法3条は、労働条件(解雇も含む)についての差別的取扱の禁止を、同法104条は、監督機関に対する申告を理由とする解雇その他の不利益取扱の禁止を規定しています。

(イ)労基法19条1項は、「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。」と規定しています。

ここでいう業務災害の場合の「療養」とは、労基法および労災保険法上の療養補償・休業補償の対象となる「療養」であって、治癒(症状固定)後の通院等は含まれず、治癒後に職場復帰不能を理由として解雇する場合は解雇制限は適用されません。

(ウ)労働組合であること、正当な組合活動を行ったことなどを理由とする解雇は、労組法7条により不当労働行為として禁止されています。

(エ)女性であること、婚姻・妊娠・出産・産前産後休業の取得を理由とする解雇や、育児・介護休業取得者等に対する解雇禁止規定があります(均等法8条、育介法10条、16条)。

解雇予告義務(労基法20条)

労基法20条は、労働者保護のため、使用者のなす解雇については、予告期間を30日間おくこと、または平均賃金30日分の予告手当を支払うことを義務づけています。この予告日数は、平均賃金1日分を支払った日数だけ短縮することができます。

また、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」または「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」においては、予告又は予告手当の支払いは必要とされていませんが、この二つの事由により解雇する場合は、行政官庁の認定を受けなければなりません。 

なお、以下の臨時的性質の労働者には、解雇予告義務は適用除外とされています。
(1)日日雇い入れられる者
(2)2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
(3)季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者
(4)試の使用期間中の者

解雇(普通解雇)に対する対処方法

まずは、使用者に対し使用期間、解雇理由、その事業における地位、賃金等についての証明書を請求しましょう(労基法22条が使用者に開示義務を定めています)。次に、解雇の取消しあるいは無事由の有無の調査をした上で、使用者との示談交渉をする必要があります。

示談交渉によっても問題が解決しない場合は、自治体(労働局等)のあっせんによる紛争解決や、裁判による紛争解決をすることになります。

退職勧奨、退職強要

退職勧奨は、「退職をしたらどうか」と勧める行為であり、労働者がこれに応じるかどうかは自由ですので、退職勧奨のみで解雇と評価されることはありません。そうであるとはいえ、退職勧奨も実質的に解雇に近い行為をすることになる以上、使用者の退職勧奨にも一定の限界があります。

また、社会的相当性を逸脱した態様での半強制的あるいは執拗な退職勧奨行為は不法行為を構成し、当該労働者に対する損害賠償責任が生じるものと解されます。

退職勧奨、退職強要に対する対処方法

(ア)退職勧奨をされた場合、退職に応じるつもりがないのなら、退職意思がない旨を口頭及び書面等で告げるべきです。一旦退職の意思表示をしてしまうと、たとえそれが自分の真意でなくても、これを撤回することは困難な場合が多いため、安易に退職届けを出すことは避けなければなりません。

(イ)会社側は、退職勧奨にあたり、当該労働者が同意するまで執拗に説得する、あるいは複数人で取り囲んで長時間勧奨を続けることはできません(違法な退職強要となります)。そこで、そのような退職勧奨があった場合は、その交渉内容や交渉状況を等を文書・録音等で残しておきましょう。

また、希望退職募集において特定の者に対してのみ退職勧奨を行う場合等、対象者の中から一定の者を選別して勧奨を行う場合がありますが、不公平な選別になっていないかの確認が必要です。使用者に説明を求めるべきでしょう。

(ウ)裁判となった場合、退職の意思表示に至る過程で懲戒解雇をほのめかして退職願等を出させたようなケースなどは、脅迫として意思表示の取消しが認められることがあります。例えば、客観的には懲戒解雇に相当する事実がなかったり、あるいは何らかの不正行為があったとしても、その態様・程度からみて、懲戒解雇は権利の濫用とみられたりする場合に、懲戒解雇があり得る旨を告げて退職願等を提出させるなどした場合は、労働者を畏怖させるだけの脅迫行為があったとして取消しうるとする裁判例などがあります。

また、勤務成績不良を会社から厳しく追及され、その事実がないにもかかわらず、このままいくと解雇されると勝手に思い込み、退職願等を提出した場合などの場合は、錯誤があるとして無効とされることがあります。

整理解雇の意義

整理解雇とは、業績が悪化して事業の継続が困難となった企業が、その経営改善などを目的として、余剰人員を整理するために行う解雇のことをいい、普通解雇の一種に分類できます。整理解雇は労働者の私傷病や非違行為など労働者の責に帰すべき事由による解雇ではなく、使用者の経営上の理由による解雇である点に特徴があり、解雇権濫用法理の適用においてより厳しく判断すべきものと考えられています。

整理解雇の4要件

整理解雇については、裁判例を通じて確立された整理解雇に関する以下「4要件」というものがあります。
(1)人員削減の必要性
(2)解雇回避努力の有無
(3)被解雇者選定の合理性
(4)手続きの妥当性

整理解雇が有効といえるためには、以上の4つの観点から総合判断し、合理性、相当性があるといえる必要があるといわれてきました。しかし、近年、上記4要件は解雇権濫用の判断要素ではあるが、これが欠ければ解雇無効となる意味ではないという複数の裁判例が出ましたので注意が必要です。

整理解雇に対する対処方法

まずは使用者に対し使用期間、解雇理由、その事業における地位、賃金等についての証明書を請求しましょう(労基法22条が使用者に開示義務を定めています)。

当事者間の示談交渉で問題が解決しない場合には、自治体(労働局等)のあっせんによる紛争解決を利用することが考えられます。この「あっせん」を通じて、上記整理解雇の4要件を使用者側に示しつつ、現実的な問題解決を探ることになります。それでも問題が解決しない場合は、仮処分や裁判手続きをすることになります。

裁判においては、上記4要件の不存在を主張・立証していくことになります。例えば、上記(2)に関連し、会社が整理解雇に先立ち新規採用者の抑制・非正規従業員の雇止め・希望退職者の募集などの解雇回避努力を行っていないことを追及することなどが考えられます。

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