懲戒解雇、諭旨解雇の意義、有効要件

懲戒1.懲戒解雇とは、事業主が労働者の責めに帰すべき理由で解雇することをいいます。懲戒解雇は懲戒処分の極刑であり、通常は解雇予告も予告手当の支払もせずに即時になされ、また退職金の全部または一部が支給されず、秩序違反に対する制裁として解雇であることが明らかにされることから、再就職の重大な障害となるという不利益も伴います。

2.諭旨解雇とは懲戒処分の一種であり、処分の対象となる労働者に対し、将来の影響を考慮し退職願や辞表の提出を促すことで、「解雇」ではなく「退職」という形を認める場合をいいます。所定期間内に勧告に応じない場合は懲戒解雇に処するという取扱いをする企業が多いようです。

懲戒処分の具体例

懲戒処分となる事由は、職業規則上、各懲戒手段ごとにまたは一括して列挙されています。具体例としては、
(1)職務懈怠(無断欠勤・出勤不良・勤務成績不良・遅刻過多・職場離脱等により職場秩序を乱したと認められた場合)
(2)業務命令違背
(3)業務妨害(組合の争議行為が使用者の業務を積極的に阻害する態様で行われ正当性が認められない場合等)
(4)職場規律違反(横領・背任・会社物品の窃盗・損壊・同僚や上司への暴行・セクハラ・パワハラなどの非違行為等)
(5)従業員たる地位・身分による規律の違反(私生活上の非行、無許可兼職、誠実義務違反等)
(6)重要な経歴詐称
などが挙げられます。

懲戒解雇に対する対処方法

懲戒解雇にあたった場合は、基本的に普通解雇の場合と同様、
(1)使用者に対し使用期間、解雇理由、その事業における地位、賃金等についての証明書を請求すること(労基法22条が使用者に開示義務を定めています)
(2)解雇無効あるいは取消事由の有無の調査
(3)使用者との示談交渉、自治体(労働局等)のあっせんによる紛争解決、裁判による紛争解決
をすることになります。

(1)については、解雇事由は具体的に記載しなければならないことになっていますので、証明書に「労働者の適格性の欠如・喪失」などと抽象的理由しか書いてなかった場合は、より具体的な説明を求めるべきです。なお、諭旨退職は依願退職のような形式をとりますが、実際上は厳然たる懲戒処分の一種なので、その法的効果は懲戒解雇同様に争いうると解されています。

電子メールの私的利用

ソーシャルメディアやタブレット・スマートフォン等の普及に伴い、社員のプライベートにおける私的メールやウェブ利用が急増していますが、プライベートであっても、他者のプライバシーや情報や企業の機密情報を無断発信すれば、社員個々人が責任を問われることがあります。

また、プライベートにおける利用が勤務先企業から貸与された情報機器類を用いている場合には、勤務先企業も使用者責任等を追及されるおそれが生じます。

電子メールの私的利用に対する対策

社員が企業の情報システムを用いて電子メールやウェブを利用する場合、その利用方法について制限を設定するためには、就業規則上の定めが必要です。最近では、電子メール利用規程やウェブ利用規程を設定している企業も増えました。このような規定類では、企業の電子メールやパソコンによるインターネット利用に際しての私的利用の原則禁止、企業による利用状況のモニタリングや利用記録の調査権限などが定められています。モニタリングの方法については、社員の人権に配慮して設定される必要があります。

電子メールの私的利用に関する判例

社員による私的メール利用と就業規則の関連性について、近時の裁判例は、「労働者は、労働契約上の義務として就業時間中は職務に専念すべき義務を負っているが、労働者といえども個人として社会生活を送っている以上、就業時間中に外部と連絡をとることが一切許されないわけではなく、就業規則等に特段の定めがない限り、職務遂行の支障とならず、使用者に過度の経済的負担をかけないなど社会通念上相当と認められる程度で使用者のパソコンを利用して私用メールを送受信しても、上記職務専念義務に違反するものではない」と判示しています。このケースでは、就業規則上私用メールが禁じられていなかったこと、労働者の送受信したメールが1日あたり2通程度であったことから、職務専念義務違反にならないと判断されました。

また、被告の備品であるパソコンを使用した私的メールの交信が懲戒処分の事由には該当するが、被告の減給処分は懲戒処分として重すぎて不当であり、懲戒権の濫用に当たるとした裁判例や、企業がメールデータを調査することについては適法と認めた上で、その調査方法につき、調査等の必要性を欠いたり、または調査の態様等が社会的に許容しうる限度を超えていると認められる場合には、モニタリングは、労働者の精神的自由を侵害した違法な行為として不法行為を構成することがあることを認めた裁判例があります。

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